賃上げ議論が活発です。
賃金は社会を写す、と言われます。たとえばイギリス労働者の賃金制度に関する研究によれば、イギリスと日本とで賃金制度の違いに驚きます。
ある自動車工場ではイギリスの代表的な賃金制度であったそうですが、数千人の労働者に適用される賃金表はわずか5段階の金額が示されただけの単純な表であったといいます。日本であれば、数十~百段階に細かく区分された賃金表(職能給の号俸表など)があり人事評価により査定され「能力」に応じて処遇されているはずです。
研究者は、この自動車工場の人事マネージャーにその理由を問うと次のような回答であったそうです。
「労働者ごとに能力に違いがあるかもしれないが職務の水準以上に能力を発揮せよと望まない。結果として労働者は能力と関係なくそれぞれの職務に応じた賃金を払うことになり、これが公平というものだ。」というのがイギリスの社会の考え方です。
この考え方の背景には厳しい労使関係の歴史が実はあるのですが、それにしても日本社会の考え方との違いに改めて驚きます。日本であれば、「能力」の違いを反映しないのがむしろ不公平と感じるはずです。
もちろん、イギリスの労働者は人事評価など行われないのです。