遠くのことはよく見え近くのことは悪く見えることを「遠近歪曲トラップ」というのだそうです。たとえば、(わが国の場合)現在は人口減少が大問題で、昔は良かったというような認識です。しかし、ある書物によれば明治時代から100年間は人口増加が大問題だったそうです*1。
賃金問題も同じように思います。現在は日本の賃金は安さが大問題になっています。昔は良かった、と。
しかし昔は良かったかというと、1980年代の円高、そして冷戦終結からバブル崩壊を経た1990年代までの論調は、概ね日本経済の問題は高コストでした。世界市場での競争力低下と”ジャパン・パッシング”を生み、”メガ・コンペティション”に勝てない原因とされました。賃金も例外ではなく、日本の賃金は高いという認識でした*2。そこで労働者派遣など規制改革が政治テーマとされ、平均賃金の推移は1997年以降横ばいになり、現在に至っています。
将来に向けてどのようなビジョンを描くのでしょうか。「ピンチはチャンス」という言い古されたフレーズがありますが、きっと現在の状況にも良い面はあるはずです。広い視野をもち潮流や歴史を理解して、そのうえでチャンスをとらえていくことが重要だと考えます。
*1 『逆・タイムマシン経営論』 楠木建・杉浦泰 日経BP
*2 「わが国の高コスト構造の是正-新たな経済システムの構築を目指して-」経団連 1997.4.15
https://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/pol124/index.html