以前ある有名人が「寿司職人が何年も修行するのはナンセンス」という発言をしたことがありました。
この発言の趣旨について意見があるわけではないですが、「修行」といいますか職業の就き方(あるいはキャリア形成)に思うところがあります。
わが国の場合、職業訓練は明治時代から(日清戦争の頃から)の教育政策により主に企業自身がそれを担っているといえます。一方で、たとえば欧州では大学等の教育機関が担うといいます。ですから、職業の就き方はというと、わが国の場合はいわば素人を雇い企業が教育を施し一人前に育てることになります*1。だから日本企業の多くは「人材育成」を大事にします。欧州の場合は、大学教育やインターンシップなどにより一人前になった(と見なされた)者が雇われるので人材育成という考え方がわが国より希薄となります。
この社会の仕組みが、たとえば給与や人事評価、教育訓練といった、人事制度と深くつながっていることに気づきます。
たとえば給与については、わが国では素人を雇い企業が教育を施し一人前に育てるので(初任給は低く、上司や先輩が教育係になり人事評価により能力に応じて昇給させる年功主義的な)能力給がしっくりきます。欧州では、一人前と見なされて雇われるので初任給がそもそも高く、昇給は少ない職務給が成立することになります。
また、その結果として、わが国では若年者失業率は良好になりますが、欧州では悪化することも見逃せません(前提として労使関係の歴史が影響していますが)。
雇われてから親方や先輩のもとで修行する日本と、雇われる前に教育機関で修行してくる欧州。
このあたりの理解、けっこう大事なように思うのです。
*1 なお、わが国でも例えば医療や高等教育など例外的な分野はあります。