なんとなく目に止まった本をパラパラすると再発見することがあります。ある本でそんな経験をしました。
自動車産業の技能を研究した本でして、「現代の雇用とくらしを支える、もっとも枢要な技能の内実はなにか、いかにその形成方法を高めていくか」という問題に取り組んだとあります。2001年(平成13年)が第1版という時代背景ですが、冒頭章にこのような記述がありました。「この問題をとりあげる最大の理由は、世界市場での競争の激化にある。先進国間でも途上国からでも競争はますます激しくなってきた。いまや世界の最高賃金国のひとつとなった日本にとって、生きぬく途は技能にかけるほかない」*1
“いまや世界の最高賃金国のひとつとなった日本”への提言として、自動車産業を支える高い技能の効果、ロボット化・情報化との関係、技能の形成、労働組合への期待と、様々な分析がなされていました。
さて、20数年後の現代。製造現場における技能水準は決して衰えていないと思うけれど、なぜ日本の賃金は安いといわれるようになったのだろうか。
この本では「資格給 pay-for-job grade」を提案されていることは強調したいです。今でいう役割給に近く、製造技能を4段階の社内資格に分けたうえで範囲給とすることが合理的であると提言されています。また、日本の生産技能者の処遇を欧米のホワイトカラーのサラリーのようにすべきとも。高い技能によって国家間競争を勝ち抜くために、製造現場の技能者を高く処遇すべしと仰りたかったのだと思います。
*1 『もの造りの技能』 小池和男、中馬宏之、太田聰一 東洋経済