映画「男はつらいよ」は全50作品あるわけですが、1971年1月公開の作品にこんなくだりがありました。
タコ社長が経営する印刷工場に勤める博が独立すると言い出し、社長と博がそれぞれ寅さんに相談するものだから大騒ぎ。結局は博が元のサヤに納まるという内容です。
博は、印刷機械を手に入れるカネさえあれば独立したい(融資が受けられず?どうやらカネは父親に借りようとしている)。
社長は、博に辞められると工場は成り立たない(どうやら職人が数人いるがスキル不足なのか?)。それよりも、街でグレていた博を工場で世話して一人前にしてやったことに恩義は感じないのか!?と感情的になっている(その人情と義理はわかるけども・・・)。
結局、カネの目途が立たないことから博は独立を諦め、映画の筋書きとしては「良かった、良かった」的になるのですね。
本作品シリーズのファンであればご存じのようにこの印刷工場は正直いってさえない職場です(作品的には、そこが愛おしいのですが)。捉え方によっては「将来のある有能な技術者を生産性の低い職場に束縛した」ことになり、やがて到来する日本経済の問題点を予感させる内容であったとマジにとらえてみるのも面白い、あるいは「場を強調する日本の社会」*1という分析を思い出したりするのです。
現代であれば、社長はどうすべきだったのか、博は独立するためにどうしたら良かったのか、もし寅さん以外の誰ならばどうアドバイスできたのか、中小企業支援、経営管理や人事管理の事例研究の材料にしてみると面白い考察ができそうです。
*1 『タテ社会の人間関係』中根千枝 講談社現代新書