前回に引き続き映画ネタです。「ドリーム」という映画がありました*1。
舞台は1960年代のNASAの研究所。膨大な計算作業をする計算手たちが、技術進歩を乗り越えエンジニアや電子計算機技術者になっていくストーリーです。興味深かったのは黒人女性が正式なエンジニアになるためには白人専用の高等教育の学位が必要というところ。人種やジェンダーの問題が絡むので複雑ですが、エンジニアという職業への就き方が興味深いところでした。一方、当時登場したばかりの電子計算機は使いこなすことができればその実力で技術者として認められる経緯も面白いです。
この映画はNASAという組織の出来事を扱っていますが、より一般的に見ることも。たとえば、日本の社会でも技術の進歩により失われた職種がありましたし(たとえば電話交換手、和文タイピスト等)、産業構造の転換で業界ごと衰退することも経験しています。そのような局面で政府は離職者の支援を行うなどしてきました。企業だって雇用責任を大切に考えてきました。いっぽう労働者としては、映画のように自力で頑張れる人ばかりではないからこそ高等教育や職業訓練を充実させることが大切だと思います。私の実感として、社会人になって学びなおす場面は率直にいって少ないと感じます。
ちなみに「コンピュータ」とは電子計算機のことではなく元々は計算手という職業を指していたそうです。将来、人工知能の技術進歩で「プログラマとか秘書とかという職業があったそうです」なんて時代も来るのでしょうか。
*1 原題「Hidden Figures」 (2016) 出演者はタラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサーなど。