「能力主義の徹底!」と聞けばどのようにお感じになるでしょうか。中には厳しい競争社会を連想する人もいると思います。確かに現実社会はどうあれ厳しい側面がありますから間違いではないと考えます。
1966年に当時の日経連において能力主義管理研究会が設置されました。この経緯を研究した資料*1によれば、実はこの頃は未だ”能力主義”の定義は定かではなかったそうです。しかし、何を目指していたかは明確で、そのキーワードが「人間尊重」でした。
この研究会に関わった人物の口述歴史によれば能力主義が目指した姿として「人間尊重ということで、職務給のように、機械のそばにお金をおいて、だれが持っていこうと関心がないというような、そういうのは日経連はとらないのだ」という言葉を残しています。いわゆる”組織石垣論”にも通じ、この時代の香りを感じる言葉です。
将来の人事管理がどのような方向を目指すべきかを考えるにあたって、能力主義の理念については、いちど振り返っておくことが重要だと思うのです。
*1 『日本的雇用システムをつくる 1945-1995』オーラルヒストリーによる接近 梅崎 修・南雲智映・島西智輝 東京大学出版会 2023