前回に触れた「組織石垣論」。この言葉は井深大が遺した言葉ともいわれています。組織より先に人材があり、その人材を活かすように組織を編成する組織論で、人材を重視する思想と言えます。対語は「組織レンガ論」。先に権限や職務を割り振る組織設計を行い、そのポストに人材をあてはめていく組織論です。給与体系としては、組織石垣論の場合は能力給に近く、組織レンガ論の場合は職務給となるわけです。
井深大が率いたソニーは、組織石垣論で大きな業績を挙げました。組織石垣論は現代でいうダイバーシティにも通じ、いまも注目できる考え方。まるで数百年の風雪に耐え今も多くの人々を惹きつける古城の石垣のように、まだまだ現役と考えるのです。
ただ問題なのは、「組織瓦礫論」であってはいけないわけです。どんなに立派な素材を集めても、何の理想もなく積み重ねただけでは、いつか崩れ落ちるしかありません。石垣づくりを専門とした職人集団穴太衆の言い伝えが「石の声を聴け」。組織づくりにも通じるものがありそうです。