『世間とは何か』という名著があります*1 「世間とは個人個人を結ぶ関係の環」であり「個人個人を強固な絆で結び付けている」のだと。たとえば、葬祭への参加に示されるという長幼の序、あるいは贈与・互酬の原理があります。こういう掟のある「世間」では、競争よりも与えられた位置を保ち生きていくほうが生きやすい。ただ、問題は「個人はどこまで自分の行動の責任をとる必要があるのか」という問題があるとこの著者は指摘されています。
組織の中で責任や権限を与えられてもなかなか決断ができないとか、協調性がやたら重視されたりとか、人材育成とか言いながら先輩後輩の関係でうまくやっていくほうが居心地がよかったりとか、身に覚えがあることは多々あります。このような様子を、近現代の日本的雇用スタイルで説明することもできます。が、日本社会が長い長い歴史の中で醸し出してきた何かかもしれないと思ったりします。
*1 『世間とは何か』 阿部謹也 講談社現代新書