巷ではある芸能事務所の件が話題になっています。この事務所に所属する芸能人を見ていると、日本企業の組織人事のテーマと関連しないでもないところがあるように思います。
まず、メンバーシップ型雇用は雇用維持と無限定性がセットです。会社は雇用を守る見返りに従業員に無限定の働きを求めます。つまり会社は雇用を守る代わりに、従業員に対して例えば長時間労働や職務変更を伴う異動等を求め、極端になるとサービス残業や単身赴任の強要といった形で現れます。逆にジョブ型雇用であればこのような無限定性はなくなり担当職務ありきの働き方ができますが、担当職務という座席が無くなれば雇用は約束されません。
従業員を芸能人、会社を芸能事務所に置き換えて考えてみます(芸能事務所の場合、契約が雇用か請負等かは不案内ですが、これは別の論点とします)。
芸能人はこの事務所に所属できれば仕事を得る機会が大いあったそうです。だからこそ事務所の経営者は看板を守ることが重要でしたが、その代わりに芸能人は無限定の何かを求められ、それが行き過ぎたのではないだろうか(もちろん、どうあれ法令遵守の下で)。そして、事務所の改革案によればエージェント契約を可能とするようですが、その場合は、芸能人は無限定の何かからは解放され芸能活動に専念できるのですが、おそらく仕事の機会は芸能人のパフォーマンス次第となることが想像されます*1。
ほかにも、若手の人材育成や先輩後輩の厳しいタテ社会構造に象徴される年功的システムなど組織人事に絡む考察ポイントもありますが割愛します。
今回の一件は、どこか日本の雇用スタイルのこれまでとこれからに通じる点があって、でもこの件がきっかけになるほどの重大さはないのですが、図らずも組織人事の変化を示す現象になったように思います。
*1 ジャニーズ事務所新会社 タレントとはエージェント契約…過去の「奴隷解約」は果たして解消されるのか FRIDAY DEGITAL 2023.10.03 配信