ある政治学者が岸田文雄首相が唱える「新しい資本主義」について論じました*1。
この論によれば、「新しい資本主義」のメッセージは何よりも「安心」。これは格差社会と非正規雇用の激増をもたらし不安を増大させたアベノミクスの是正である。この富国論には賛成なのだが、個別政策である総合経済対策がこの富国論のどこに位置づくのか論じられない、というのです。
「新しい資本主義」は同時に、コロナ禍で明らかになった日本社会の脆弱性を克服するために時代は社会システムの「分散」を要請しているというのだが、この政治学者は分散こそ脆弱性を増大させるもので、安定につながらないと論じています。いつだったか、別のある識者が日本の歴史を遡り、国家が危機にあるときは中央集権、安定しているときは地方分権であった、と述べていたことを思い出したりします。
例えば内閣府が示した三位一体の労働市場改革も「新しい資本主義」の政策なので分散を目指したものだとしたら、これは国民に安心を提供するのだろうか。むしろ集中を必要としているのではないか、そんな風に考えてみる必要もあるように思います。
今回から標題に連番を付けることにしました。何番まで続くことやら。
*1 「新・富国強兵論」 先崎彰容 文藝春秋 2023年2月号