あるネット記事のつぎのタイトルに思わず引きつけられました。
「ウチの会社は「初任給が高いから昇給ナシ!」って違法では? 転職した方がいいでしょうか?」*1
質疑応答風の記事の編集者は、昇給ナシの会社も少数あって違法ではない、と答えています。そのとおりだといえます。私ならば違法どころか社員に有利な話なのではと答えたいと考えます。いわば、朝三暮四ならぬ“朝四暮四”というべき雇用条件だからです。
でも、この質問のような意見がなぜあるのかといえば、ひとつには長らくの日本的な定期昇給の慣行があること、ふたつめに賃金の相場が分かりにくいことに原因があるからではないでしょうか。
ひとつめについては「定期昇給はもう止める」という考え方があります。詳細は別に譲りますが、定期昇給のひとつの特徴は若年・未経験者の賃金を本来より低めに設定し人材育成といいながら少しづつ引き上げていく能力主義の考え方にあります(いわば朝三暮四システム)。だから、冒頭の質問は「本来より低め」を止めて最初から本来の賃金を支払う、だから昇給はない、という方法なのであれば“朝四暮四”と表現できるわけです。
ふたつめについては、企業横断的な賃金相場形成の問題です。この点については企業と労働組合の関係にも原因があり、またそもそも賃金は最低賃金を満たす限りにおいて会社と労働者との交渉(実際には転職等の労働市場の影響)で決まる側面がある以上、納得感だけの問題ともいえます。
ですから、賃金水準が納得のいくレベルであれば定期昇給なんかなくてもアリなわけです。よく「昇給もないような会社じゃダメ」といった社会的圧力もあるように思うわけですが、いわゆるベースアップ(これも日本的ですが)という会社業績に応じた賃上げを経営判断で行う必要については別の議論といえます。
*1 「ウチの会社は「初任給が高いから昇給ナシ!」って違法では? 転職した方がいいでしょうか?」ファイナンシャルフィールド編集部 2023.10.25 05:20 配信