二重システム理論というものがあるそうです。ある方から「私はシステム1優勢なので」と言われて、なんのことやら?と思って調べてみました。
説明できる知識は持ち合わせていませんので参考文献を引用すると「人間の認知プロセスは、迅速かつ自動的に働く直観的な「システム 1」と、意識的に間をかけて遂行される熟慮的な「システム2」の2種類から成る」*1 のだそうです。ひとは通常の場面ではシステム1(直観)が優先され、システム2(熟慮)は困難に遭遇しない限り動員されない、という考え方が支配的だそうです。つまり一方、いついかなるときも倫理的で合理主義的であるべき人間観は妄想のようなものなのだとか。
でも、自分としてはどちらが優勢といわず、少なくともビジネスの場面では等価と考えたいです。というのも、ひとの心に直観と熟慮が同居していて、そのバランスを説く考え方が古今東西にあるからです。
たとえば、伝統的な人事評価(能力評価)では、「判断力」と「企画力」といった項目があるものです。私が理解するに、前者は行動力であり後者は思考力と言い換えても良いと考えます。闇雲に行動するのも検討してばかりで行動しないのも問題だから両方のバランスが大事だということでしょう。古の言葉には「子曰く、学びて思わざれば則ち罔し、思いて学ばざれば則ち殆し」とあります。行動することと思考することのバランスを説いた言葉と理解していまして、やはり通底するところがあるように思うのです。
*1 「思考と直観―行為指導原理中心の倫理学をこえてー」 高島和哉 関東学院大学『経済系』第287集 2023.2