ある雑誌に日本のエリートについて識者の座談会が掲載されていました*1。それは内部労働市場の短所を指摘する内容でした。
内部労働市場には長所短所があります。
長所については、例えばかつて日本的経営の成功により語られてきました。内部労働市場のもとでは長期雇用と年功序列が人事の仕組みとしては定番となります。この仕組みにより経営と雇用の安定が図られるというわけです。経営環境が許せば、労使ともに組織の内部で異動しながら長く経験を積み熟練度に応じて処遇される長期雇用・年功序列は理に適っているわけです。
では短所はといえばどうでしょうか。冒頭の座談会によれば、日本の旧陸軍エリートの人事がまさに内部労働市場の短所を示しているとか。たとえば、陸軍士官学校を卒業したエリートでも何らかの理由で更迭されたりして組織外に放出されれば活躍の場は限られたのだとか。内部登用しか道がなかったため、たとえ失敗しても処罰されない傾向を生み組織が停滞していったそうです。こういった内向き意識が残念ながら失敗の一因だったのではないか、というのです。
このように内部労働市場が陥る危機や失敗の例は恐らく他にもたくさんあると思います。そこを反省して少なくとも人事の分野では、内部労働市場の短所を克服するべく、年功序列の欠点を排除するという形で取り組まれてきたことが知られています。ただ、「年功序列」を排除するのか、「年功序列の欠点」を排除するのかという違いは意識すべきだと思います。
(今年はこれにて書き納めとします。みなさまよいお年をお迎えくださいませ。)
*1 「昭和陸軍に見る日本型エリート」 文藝春秋 2023年12月号