昨年春闘の賃上げ実績は29年ぶりに3%台に達しましたが、今年も賃上げを決める春闘が始まり、昨年を上回る賃上げ率になるかどうか関心が高まっています。
春闘の過程では賃上げだけでなく様々な人事制度の課題について交渉や話し合いがもたれます。どのような課題が俎上に上がっているかを見ると興味深いものがあります。
ある人事関係雑誌の調べによると*1、「交渉で話し合う予定の人事施策」は次のとおりでした(経営者側と労働者側とでは交渉で話し合う予定は少し異なるのですが傾向は良く似ているので、経営者側の状況だけ紹介します)。
最も大きい課題は「人材の採用・確保」19.1%。2番目は「時間外労働の削減・抑制」15.4%。3番目は「諸手当の見直し」14.0%。最近言われてきたジョブ型やリスキリングに関しては、それぞれ2.2%、5.9%となっており、相対的にみると重要度は(まだ?)低い様子です。
おそらく多くの企業で若手人材の採用が難しいなか現有社員の離職防止(人材確保)が現実的な対応になっています。そこで、たとえば「働き方を変え時間外労働を減らす」「技術者や熟練者の処遇を手厚くするため手当を見直す」といった、先の課題のような対策になるのだと考えます。また、私の実感としては、人材確保を目的とした高齢者雇用(定年延長、再雇用制度の見直しなど)も進められているように感じます。
こうやって現有社員が定着することで、コロナ後の追い風を逃さぬことにより得られる新たな機会もあるものと思います。
*1 労政時報 本誌 4071号 2024.2.9