令和7年3月卒業予定の学生の就職活動が本格的スタートしました。人材不足を背景にして「2月1日時点で企業から内定を受けたのは23.9%と、前の年の同じ時期より4ポイント増」と活動は早期化しているそうです*1。
内定の早期化にはインターンシップ制度の変更も影響しているそうです。インターンシップ制度はあくまでキャリア支援教育であり就職活動ではないという行政の立場は不動のようですが、新しい制度では一定の基準を満たせば得た学生情報を企業の広報活動や採用選考活動に使用できるとされました*2。この制度改正は良い動きだと思います。少なくとも意味の薄い1dayインターンシップより意味のあるインターンシップを促すことになるからです。
たとえば、フランスでは「スタージュ」と呼ばれるインターンシップがあるそうです。学業期間のおよそ半分をこれに費やし、学生からは「搾取だ」批判されるくらいインターシップに参加しないと就職ができない(それでも職にありつけない)のが実情だとか*3。つまり、国によってはインターンを通じて仕事ができる人材だと学生自ら証明しないと企業が採用しない考え方があるわけです。
我が国はどうでしょうか。批判も多い点ではありますが素質・人物を採用し、「素人」に給料を払いながら育成していく考え方が今なお主流だと思います(国による雇用スタイルの違いはこれまでも本ブログで触れてきましたので割愛します)。こういう日本の雇用の考え方(風土や文化)におけるインターンシップは我が国なりの在り方があるはずと考えてみると、日本企業の人事の仕組みは企業理念のもとで様々な職務を経験しながら人材育成を図るところにありますから、採用を前提としたインターンシップでは目先の職務に適性があるかというよりも、企業理念(社風とか経営層の考え方とか)とのマッチングを優先することが実は大切なのでは、と考えるわけです。
インターンシップの就業体験にもこういう観点を組み込んでみると良いのではと考えます。たとえば、機械メーカーが設計志望の学生を受け入れたとして、設計部署で数日間を過ごさせるよりも、営業に同行したり、製造現場で作業したり、会社の成り立ちを体験できることが大切だと思うのです。考えてみれば当然ながら、これは多くの企業が行う新人研修に似ています。
*1 大学生の就職活動 本格的スタート “早期化の傾向強まる” NHK WEB 2024年3月1日 17時06分
*2 インターンシップの改正ポイント(厚生労働省)PowerPoint プレゼンテーション (mhlw.go.jp)
*3 よろしければ本ブログ 2021年4月15日投稿を参照ください