先日、政府の経済財政諮問会議において「高齢者の定義を5歳引き上げる」ことが提言されました*1。これは、高齢者の定義を70歳に引き上げるねらいがあるそうです。また、高齢者の定義再検討は以前からも専門機関から提唱されていました*2。現在のところ、世界保健機関では65歳以上を高齢者といい、日本の人口統計も65歳で前期高齢者(75歳以上を後期高齢者)としています。
漫画「サザエさん」のお父さんである波平さんは54歳なのだそうです。当時としては高齢者として描かれているのですが、漫画が描かれてから半世紀以上が過ぎ現代の54歳はもっと若々しいイメージでしょう。漫画はさておき現実を考えても、栄養状態の改善や医学の進歩により高齢者の定義を変化させ社会の制度設計の基礎とするべきなのでしょう。たとえば健康保険や年金制度の設計は65歳を基準にしていて、日本の運転免許制度では70歳から高齢者講習が始まりますが、将来どのようにすべきかは将来の波平さんのイメージによるのだろうと思います。
雇用の分野では、高年齢者雇用安定法において55歳以上が高齢者(45歳以上が中高年齢者)と定義されています。これは、かつて法律上の定年年齢を55歳から60歳に引き上げるにあたり雇用安定を図る対象者を区分するため定義したものでした。今後、雇用がエイジフリーを目指すとなれば定年を設けないことにつながります。しかし、人の一生においていつかは限度があるわけです。OECDでは生産年齢人口(working age)を15歳から64歳と定めていますが、いつまで働けそうかあくまで感覚的ですが70歳から75歳あたりが限界のように思われます(もちろん個人の勤労意欲や健康状態には個人差があります)。ちなみに現在、経営者の平均年齢は60歳~62歳くらいといわれていて、実感としても60歳代まではバリバリ働けると思います。
こうやって見てみると、高齢者の定義はお上に従うとしても、ひとり一人が自分なりの働く期限をどう決断するかが問題です。この決断をするためには、なるべく早い年齢でキャリアの最後を意識する必要もあるように思います。古来より初老の40歳で人は老境に入るそうですし、「人間50年」の名言を思えば50歳には、遅くても55歳。この節目節目に自らのキャリアを考える機会がありそうです。
*1 「65歳以上とされる高齢者の定義「5歳引き上げ」を 政府の経済財政諮問会議で岸田首相「誰もが活躍できる社会を」 FNNプライムオンライン 2024年5月24日 金曜 午後4:52 配信