ある有名なニュース解説者による次のような質疑応答形式のネット記事がありました*1。
「Q 「とりあえず3年」仕事を続けたら、どんなことが分かりますか?」
「A 真に受ける必要はありません。ただ……」
回答者である有名ニュース解説者は、「3年間」は根拠はないので真に受ける必要はない。しかし、とりあえず働いてみることで見えてくることがあり組織に居続けるかを判断する期間であると、ご自身の経験も交えながら語っています。そして、このネット記事には「就社した奴の話、就社ではなく就職の時代、少しずつだがジョブを選んで就く人が増えている」といったコメントが付いていました。
3年間かどうかは別にしても、解説者がいうとおり仕事を続けてみることは良いことでしょう。私も勤め続けることで得られる効果について思うことがあります。それは、組織自体が何らかキャリア・パスを示していることです。それこそ就社を前提にした時代は当たり前の概念だったかもしれません。ところが、組織から離れてみると分かりますが、独力でキャリア・パスを計画することは、なかなか困難です。組織の中にいて良く組織の在り方(たとえば先輩の方々)を観察してみれば、あるいは組織に長くいて自分のこれまでを振り返ってみればキャリア・パスに気付きます。問題なのは、それがこれからキャリアを歩もうとする人に魅力的かどうかですが、組織を離れ自分自身で探すより経済的(最近の言葉でいえばコスパが良い)かもと思うのです。
新規学卒者(20歳代くらいの人)が数年先まで見通して効果的な自分のキャリアを計画することは恐らく無理です。身近に良き指導者やロールモデルがいたり、優秀なキャリアコンサルタントがいるような幸運があれば別ですが。もし今いる組織の仕事内容に不満があり早計に渡り歩くことになれば、恐らくは次々と組織の底辺を彷徨うだけになりかねません。せめて誰かに相談しながら転職をすべきですが、でもそうするくらいならばせめて3年間はひとつの組織で働いてみるほうがよほど意義があると思います。
とはいえ、組織に縛り付けようという意図はありません。新しい世界を切り拓くのはいつだって若者です。組織を離れ、計画ではなく敢えて漂流してみることで得られるものもあるかもしれません。この世の中を作り上げるために組織を利用するかどうかの違いだと思うのです。
*1 「“とりあえず3年”職場にいたら何が分かる? 池上彰さんが新入社員に伝えた“答え”「真に受ける必要はありません。ただ…」池上さんに聞いてみた。」 文春オンライン 2024.6.6 配信