秋は企業内研修会や会議のシーズンです。たとえば、新任管理職研修、中でも人事評価やフィードバックの研修が挙げられます。こういった研修会で受講者からよく寄せられる質問が「評価基準があいまい」「何を基準にしてよいか不安」といったものです。
特に能力の評価は本来的に難しいものです。そもそも能力は見えにくいものだから。しかし、当たり前のように定期昇給を行っている企業は何を根拠に昇給をするのでしょうか。その根拠に人事理念である「能力を高め、仕事を高め、処遇を向上する」という高位均衡を掲げていることになるのではないでしょうか。ならば、まず能力を定義することが必要になります。さらに仕事は単に与えられるものではなく創り上げることが求められます。そうすることで、処遇も向上できるという人事の姿を目指しているはずなのです。
「基準があいまい」な企業では必ずといってよいほど等級基準を明確にしていません。素朴なものでもよいから等級ごとの期待像を言葉にされることをお勧めします。そしてできるならば期待像に見合った職務・担当業務を従業員同士対面で話し合うべきです。部下の能力を見極めようと思えば等級にみあった職務を少なくとも毎年の仕事の3割は与えないと判断できないともいいます。要するに評価は仕事の与え方であり、創出(目標化)です。これが付加価値向上であり成長戦略のひとつの姿でしょう。
なお、ある人事関係雑誌の調査によれば、階層別研修を実施している企業の割合は96.6%(従業員1000人以上の企業に限ると100%)となっています*1。研修会の開催方法はオンライン開催も増えてきましたが、まだ対面型(あるいはオンラインとの併用)の開催が根強いです。eラーニングやオンラインの効率性も活用しながら、対面の良さも活かして欲しいものです。
*1 労政時報 4082号 2024.8.9