(新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。)
松岡駒吉という人物がいました。明治21年に生まれ、機械工見習いとなり、大正時代に鈴木文治が創立した友愛会に参加しました。以来、一貫して民主的な労働運動を行ない、現行憲法下における初代衆議院議長も務めました。彼の人生はわが国の労働者と経営の関係史そのものだと思います。
かつて労働省の中央労働委員会の会長を務めた藤村敬三が「労使関係の本質は、親和的な経営対従業員関係と、対立的な経営対組合関係の二元的関係にある」と言ったそうです*1。わが国の場合は企業別組合が中心であるためこの二元的関係が曖昧ですが、重要だと思うのは松岡駒吉のようにあくまで民主的な労働運動を行なうことにより、この二元的関係を先取りしたかのような人物がいて、そして彼のことを理解した経営者がいたという歴史です。
さて現代、労働を取り巻く状況は課題山積といってよいでしょう。歯切れの良い解決策はないと思います。たとえそうであっても、もし何か手掛かりを求めるとしたら労使関係の歴史をたどることを忘れるべきではないと考えます。
松岡駒吉の信念は、18〜19世紀にかけて人類が勝ち取った自由と人間性の尊重を守ることだったそうです。もちろんこういう価値観も噛みしめるべきですが、労使関係の歴史を作ってきた、こういう方々の誠実さとか勤勉さが現代日本の働く人の心に響いて欲しいと思うのです。
参考資料:『松岡駒吉伝』松岡駒吉伝記刊行会 S38.8.15
*1 『働き方改革の世界史』 濱口桂一郎/海老原嗣生 ちくま新書