「人材育成」とか「人材確保」とよく言うが、おかしいのではないか?と言われハッとします。古い書籍にこのような指摘がありました。
「育成や確保と言うが、これは「使いやすい人」という意味にとれる。これを書いた人は、自分が上に立った気持ちで書いているのだろう。(中略)明治時代には、人材という言葉の後は「発掘」とか「登用」という言葉を続けた。すでにあるものを掘り出すだけで、向こうは初めからダイヤモンドである。育成などとはおこがましい。登用は「そういう人のためなら、自分が辞める」という意味である。しかし「人材育成・人材確保」はその反対で、「自分はますます居座って頑張る」という意味である。」*1
なるほど、と思わせられる。
それではと、経済産業省の「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~ 人材版伊藤レポート2.0~」を試しに調べてみると、「育成」という言葉は多く遣われているけれど「発掘」という言葉は皆無。「確保」や「登用」という言葉はどちらも多用されてしましたが。先の書籍の著者に言わせれば、少々上から目線の報告書ということになるのでしょうか。それとも、よほど日本にダイヤモンドが存在しないという認識なのでしょうか。
ふだん疑いもなく、むしろ前向きな意味で遣う言葉でも良く吟味しないと、と改めて思わされました。
*1 『人事破壊』 日下公人 PHP研究所 1994年