「分限」を国語辞書で調べると「身分/身のほど」ということだそうですが、公務員人事の世界では分限という用語は免職とセット、つまり解雇と同じ程度で使用されます。公務員の解雇は制度的に慎重に進められ、たとえば政治信条を理由にとか、政争に巻き込まれ本人に責めが無いのにとか、そのような理由でクビにならないように身分保障をした歴史があるため、と聞きます。
あるネット記事に、県職員が能力不足で解雇されたことが報じられていました*1。改正地方公務員法が平成28年度から施行され、すべての地方公務員は人事評価を行うことになりました。また人事評価結果は処遇反映や分限処分に活用することが法律で定められています。今回の報道にあるように能力不足を理由にした分限処分は、かなり慎重に行われたに違いありません。一般に、地方自治体の内部規程には人事評価結果に基づき分限処分を行う場合があることが規定されています。しかし実際にはルールどおり適用するというより、本人との意思疎通を何度も重ね、挽回の余地を与え、それでも改善が無い場合に、さらに(おそらく)労働組合とも懇談を行い、やむを得ず行われるはずだからです。このあたりの事情は人事実務に関わる者であれば実感があると思います。
ところで、記事には「県は、成果主義を取り入れる趣旨の地方公務員法改正に基づき」人事評価制度を導入したとあります。実際に県の文書に成果主義という言葉が使われていればそうなのでしょうが、改正地方公務員法では「能力と実績(業績)」という用語を使っています。それらを成果と括ればそうなのですが、そもそも改正地方公務員法では成果主義という用語を使用していないので、少しニュアンスの違いというか、誤解を招く部分もあるのではないかと思ったりします。
*1 「能力不足」理由に”解雇” 佐賀県の正職員2人 2024年2月末、半年研修しても「改善見られず」2025/01/31 06:35 佐賀新聞