前々回ブログで紹介した昭和35年発行の『わが国賃金構造の史的考察』に、このところハマり気味です。今回は昇給制度についての記述に触れてみたいと思います。それによると昇給制度の歴史は、
「戦前においても職員は昇給制度の下で年々の昇給が保障されていた。河田蜂郎調査によると年に一割程度上がるものが多く」「これに対して戦後では人事考課の導入により、差別昇給する例が年々増加している。昇給率は三~七%が最も多い。」「従つて戦前では七年後に倍の賃金となるわけであるが、戦後においては昇給率の低下と、他方、年功とによって昇進を行いその結果もたらされる賃金引上げの方が平和的であるとする、いわば年功序列型の人事管理という点で戦前と異なる様相が現れている。」
ということだそうです。
前提として知るべき点は、毎年昇給するのはあくまでひと握りの職員(いわゆるホワイトカラー)の場合であって、多くの工員(いわゆるブルーカラー)には昇給制度はないところです。工員にとって、毎年の昇給が保障される職員との待遇差は不満で、そのため戦後の労使交渉にあっては身分差別の撤廃が要求のひつとでした。また、職員の優遇待遇には賞与や退職金や年金、あるいは定年といった現在は当然となっているものが含まれ(要するに工員には老後の保障がなかったため引退もできなかったわけで)、年功序列型人事管理は現代の認識とは逆に多くの労働者が羨む人事管理であったということです。戦後は民主主義を謳う中で、このような身分差別を撤廃し年功序列型人事管理を労使の、特に労働者側の要求によって導入してきた経緯がありました。
こういった経緯を知るとき、もちろん現代には現代の課題があって現代の人事管理の在り方を探る必要があるわけですが、年功序列型人事管理を単に批判するのではなくて過去の人々が望んできたことを肯定的に総括する必要もあるように思うのです。