地味な扱いでしたが、団体等検定を厚生労働省が初めて認定したという報道がありました。民間が行う検定を職業能力評価のひとつとして国が認めたものです。職業能力評価制度は技能検定が有名ですが、それを補うような形で「家政サービス」、「フォークリフト荷役」、「コンクリート打込み・締固め工」の三つの民間検定が初めて認定されたとのことです*1。これまでも職業能力評価制度には認定社内検定という制度もあって、技能検定だけではカバーしきれない分野を民間のアイデアで補ってきました。
個々の企業で仕事の能力をどう評価するかといった問題は常にあります。たとえば技能検定は特に製造業を中心に取得が積極的に行われますが、個々の企業の内部では、技能検定をとったからと言って仕事に役立つのか、本当にわが社に必要な能力を示しているのか、といった会話が交わされるものです。これに意地悪な反論ですが「それじゃ、わが社の人事評価は仕事に役立っているのでしょうか?」と問うてみたいのです。
この問題は、長期雇用と職業能力の関係をよく表していると思います。企業も労働者も(かつては)長期に安定した雇用を望み、また企業は人事権を手元に置きたいので、企業内特殊能力を重視されてきたともいえます。人事評価制度で「能力評価」を行う理由も、わが社の人材をわが社において評価することで人事権を手中にしていることを示したともいえるわけです。だから、人事評価は、その内容(仕事に役立っているかどうか)よりも評価していること自体が重要であって、他者がわが社の人材を評価することにどこか拒否感があったとも考えるわけです。
同じようなことは学歴についても言えます。どこかの報道でありましたが、学校で学んだことが仕事で活かせているかといったアンケートについて、活かせているという回答は5割に過ぎなかったとか。海外と比較すると少ない割合だとのことです。「大学で学んだことなんて社会で活かせない」という意見もよく聞きます。これも日本の伝統的な雇用スタイルが生み出した現象でしょう。大学は企業の外にあるので、長期雇用の前提では学校教育と職業能力の関係は薄まってしまうわけです。
それでは、今後はどうなのでしょうか?
たとえば長期雇用ではなくなり人材の流動を高めようとすれば、職業能力を評価する仕組みはこれまでとは異なり企業の外に必要なはずです。将来、職種幅広く職業能力の評価を専門機関などに頼る時代がくるかもしれません。
*1 「団体等検定」を初めて認定します ~「家政サービス」、「フォークリフト荷役」、「コンクリート打込み・締固め工」を認定~ |厚生労働省